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Q&A <2008年>

Q核融合について 1
 私は大学で環境やエネルギー関連の学科に所属している学生です。核融合に関する本を読んでいて、ふと思い浮かんだ疑問がどうしても頭から離れなかったので、このようなメールを送らせていただきました。
  質問なのですが、核融合の際に質量欠損によって生じたエネルギーはどのようにして粒子の運動エネルギーに変換されているのでしょうか。また、その際に運動量はどうやって保存されるのでしょうか。直感的には衝突した二つの粒子が一つになって、その際に衝突前とは比べ物にならない速度で運動するという状況で運動量保存則を満たすのは不可能なように思えます。
  核分裂ならば結合エネルギーがバネのような働きをして、分裂した粒子がそれぞれ反対方向に向かうことで運動量が保存されるイメージが浮かぶのですが、核融合に関 してはさっぱりです。
  恐らく普段馴染みのある剛体運動の力学で理解されるレベルではなく、素粒子レベ ルで何かが起こっているのだとは思いますが、それ以上のことがわかりません。

核融合反応を研究する上で、大変大事で、基本的な質問をありがとうございます。
  核融合反応によるエネルギーが、ひとつだけの原子核に与えられるとすると、運動量が保存されないではないか、ということですね。核融合には多くの組み合わせがありますが、核融合の結果、ひとつだけの原子核ができるのではなく、2つの原子核の場合や、中性子、陽子、陽電子、光子などの運動量を運ぶことができるものが同時に運動量を保存するように生成されるのです。
  核分裂ではウランが例えば、バリウムとクリプトンと2個の中性子に分かれます。核分裂のエネルギーはこれらの原子核および中性子に運動量が保存するように分配されます。
  核融合でも分配の考えは同じです。例えば、質量数2の重水素(原子核は陽子1個と 中性子1個)と質量数3の三重水素(原子核は陽子1個と中性子2個)が核融合すると、より重い質量数4のヘリウム(原子核は陽子2個と中性子2個)と、(ここです)「質量数1の中性子」に変わります。この核融合反応1回で質量欠損によって17.6MeVのエネルギーが発生します。
  ご存知のように運動量保存は質量と速度をかけた運動量が反応の前後で保存するというものです。核融合を起こすためには一億度という温度、エネルギーにして10keV(スピードにして1000km/s)という、速い速度で原子核同士がぶつからないといけません。
ところが核融合反応によって生じるエネルギーはさらにその1000倍以(17.6MeV=17600keV)ですので、反応前に粒子が持っていたエネルギー(速度)はこの反応後のエネルギー(速度)に比べると非常に小さいです。ですので、ここでは簡単のため、反応前の速度はゼロとしましょう。そうすると反応後のヘリウムと中性子の持つ運動量もゼロでないといけません。すなわち ヘリウムの質量(4)Xヘリウムの速度+中性子の質量 (1)X中性子の速度=0です。これが成り立つためには、中性子がヘリウムの4倍の大きさ(速さ)で反対向きの速度を持つことが必要となります。実際にそのようになります。運動エネルギーは質量x速度の自乗÷2ですから、生じたエネルギーはヘリウムと中性子へ、その質量比の逆数である1:4に分配されます。つまり、質量欠損がもたらした核融合のエネルギー17.6MeVのうち、ヘリウムが3.5MeV、中性子が14.1MeVをもらいます。
  核融合反応はその反応によって固有の質量欠損、すなわちエネルギーを生み、その反応生成物に配分されるエネルギーはこのように運動量保存によって決まります。
  次に、質量欠損によってエネルギーが生まれることは、アインシュタインの特殊相対性理論の骨子である「物理法則はすべての慣性系でなりたつ」と「光の速度はすべての慣性系で等しい」から導き出される質量とエネルギーの等価性によって説明されます。空間3次元と時間1次元を同様に扱う運動量の考察から、エネルギーが運動エネルギーと静止エネルギーの和で表されます。すべての運動は相対的ですが、物体が動いていないように見える座標系から見たエネルギーとしてE=mc2(Eイコールmcの2乗)として定義されます。核融合では原子核の中の陽子や中性子を結合させているエネルギーすなわち質量が、原子核の組み合わせが変わることによってエネルギーとして開放され、その分、質量が減るという訳です。簡単に説明することが難しくて申し訳ありません。
2008年1月28日

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