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Q&A <2008年>

Q大学の自由課題で核融合について調べているのですが、核融合についてのデータが 少なくて困っています。
質問ですが、磁場閉じ込め方式核融合炉に必要なプラズマの条件として
1.温度10keV(約1億度)
2.密度が100兆個/cc
3.閉じ込め時間1秒以上
となっていますが、上記の1.2.3の条件を満たすのに、最低限その装置に必要なエネルギー(電力)はどれくらいなのでしょうか?
また、DT反応では重水素と3重水素を燃料とし、重水素と3重水素は海水から取りせますが、燃料1グラムを海水から取り出すのに必要なエネルギー(電力)はどのくらいなのでしょうか?よろしくお願い致します。

燃焼条件を満たすのに必要なエネルギーは、というご質問ですが、その回答は何通りかあるでしょう。まず、温度1億度、密度100兆個/ccのプラズマがどのくらいの内部エネルギーをもつかを考えてみましょう。LHDくらいのサイズだとプラズマの体積は約20立方メートル相当なので、およそ5メガジュールとなりますね。LHDではこれまでに1.6メガジュールの蓄積エネルギーを達成しています。しかし、このエネルギー量というのは、プラズマの密度が(「高密度」とはいえ大気と比べるとずっと)低いため、実はそれほど大きくはなく、例えば家庭用の電子レンジでも数十分で到達できる程度にすぎません。簡単なことのように思えますが、実際にはこれだけの高温・高密度になると、速やかにエネルギーが漏れてしまいますので、燃焼条件である1秒間を満たそうと思えば、1秒程度は保持できる高いプラズマ閉じ込め性能を確保した上で、「1秒以内にエネルギーを注入する」必要があります。上のLHDの例では、最大約20メガワットの加熱入力を用いて達成されました。

次に、将来に想定している核融合エネルギー炉について考えます。核融合炉では、究極的には核融合反応で産み出されるエネルギー自身で炉心プラズマの燃焼状態を維持できる「自己点火条件」での運転を前提にしていますので、この場合、外部から加える必要のあるエネルギーはゼロという回答になります。もっとも、プラズマを閉じ込める磁場を作るためにコイルに電流を流したり(超伝導材を用いるので電力量は少なくてすみますが、超伝導状態を維持する為に冷却するための電力が必要です)、熱交換に必要なポンプ動力等により、必然的に「所内消費電力」は発生します。現実には、ある程度の外部加熱入力を併用する方がコスト的に有利であったり、またトカマク型の核融合炉では、プラズマを維持する為にプラズマ中に常に電流を流す必要もあります。それらを勘案して、将来の核融合炉ではトカマク型で20%程度、ヘリカル型で5%程度の所内電力が必要とされます。

さらに、核融合炉の「起動時」、つまり自己点火条件へ到達するまでに必要な加熱入力がどれほど必要か、という観点からお答えします。これは、個々の核融合炉の設計に依存する部分でありまして、ちょうどキャンプで炭に火を点けるときと同じで、様々なシナリオが考えられます。強力なバーナーで一気に火を点けるのか、弱い焚き付けで少しずつ火勢を増していくのか、コストとの兼ね合いもありますが、一例を挙げますと、ヘリカル型核融合炉FFHR-2m(出力2ギガワット)の設計では、最大外部加熱入力は100メガワットで、それが例えば1時間かけて注入され点火へ至るようなシナリオが検討されています。

2つめのご質問について回答いたします。
まず、三重水素については、海水中にもわずかに含まれますが、その量は充分ではないため、核融合エネルギー発電においては別途生産することを想定しています。具体的にはリチウムと中性子との核反応により三重水素を作ります。核融合エネルギー炉の炉心を取り巻くようにリチウムを含む構造物(ブランケットと呼びます)を設置すれば、発電の傍らで効率良く三重水素を生成できるのではないかと考えられています。
一方、重水素については、水素の中に必ず一定量含まれていますので、ここから取り出すのが近道です。重水素と普通の水素(軽水素)とは化学的性質が殆ど同じですから、重水素を取り出す過程は、電気分解や化学反応を用いて化学的な結 合エネルギーを切り離すものではありません。両者を分ける(同位体分離と呼びます)だけで良いのです。極端に言えば、ミクロなピンセットで重水素だけをつまみ出せば、原理的にはエネルギーがゼロでも分離が可能です。実際はそれでは効率も悪く技術的にも困難なので、ある程度のエネルギーを使って、拡散速度の違いを利用したり、化学的性質の僅かな違いと平衡反応とを利用することで、効率良く同位体分離を行なっています。重水素の場合は、「水-硫化水素二重温度交換法」という化学交換法が従来よりよく利用されてきました。さらに、分離された重水素は化合物(水)の形になっていますので、そこから単体の重水素を取り出すのに電気分解も行ないます。実際にエネルギーを要するのは、主にこの電気分解の過程であり、普通の水の電気分解と同じ量になりますので、ご自身で計算してみてください。温度条件や効率にもよるのでしょうが、燃料1グラム(うち重水素は0.4グラム)を作るのに、40キロジュール程度でしょうか。そこから得られる核融合エネルギー(約300ギガジュール)と比べてずっと小さいことがお分かりいただけると思います。
2008年11月5日

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