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Q&A <2013年>

Q先日、多治見市文化会館で重水素実験に関するシンポジウムが開催されたことを、開催後のニュースで知りました。出席したという反対派の方から、「トリチウムが発生するから放射能汚染される。発生したトリチウムの95%は取り込むことが可能らしいが、残り5%は放出されるらしいから問題だ」と話していました。
  1. トリチウム(三重水素)が放射性物質になるのですね。実際に重水素で核融合させた場合に、そのように放射性物質が飛散するのでしょうか?
  2. 私の知識にないのは、三重水素を保持する方法です。三重水素はどのような状態や容器で保管されるのでしょうか?
  3. また、三重水素を空気中や河川や海へ放出させた場合、三重水素はどのように変化するのですか? 放射能汚染のような事態は発生するのでしょうか?
  4. 【研究所からの回答に対し、再質問をいただきました。併せて回答を掲載いたします。】
  5. 「(トリチウムは)10億ベクレル以上で放射性物質としての取り扱い」、とあるのは、何か法令などで定められているのでしょうか? 発行した団体、機関の名称、法令の名称などを、具体的に示して頂けませんでしょうか?
  6. 「放射性物質として扱わなくてもよい量です」、とありますが、トリチウム自体は放射能を持っているのですよね。そうすると、「扱う」「扱わない」「量」にかかわらず、放射性物質であることにはかわりはないと思いますが、いかがでしょうか?
  7. (「法令基準の1/25以下であることを確認して排気塔から放出」するという、)こちらの基準を定めている法令についても、法令の名前などを具体的に示して頂けませんでしょうか?
  8. (重水素実験により発生するトリチウムの)除去・回収が100%にならないのは、どのような理由がありますか?
  9. 将来、発電などで実用化されるであろうと仮定した場合に、(もちろん、計画中の実験とは条件は変わってきますが)その際に使用したり発生したりする、トリチウムなどの放射性物質は、どれくらいの量になると想定されますか?それが環境や人体に影響を及ぼす可能性についてはいかがでしょうか?

  1. 実際に重水素で核融合させた場合に、放射性物質が飛散するのでしょうか?

    研究所は、将来の核融合エネルギーの実現を目指して、高温のプラズマに関する学術研究を行っており、核融合反応を起こすことは行っていません。プラズマは希薄な電離ガスで、数千万度以上の高い温度になりますが、密度は大気の10万分の1以下と低いため、プラズマの持っているエネルギーは小さく、爆発するようなことはありません。
     研究所が計画している重水素実験の目的は、プラズマの基となるガスを水素からその同位体である重水素に代えて、プラズマの温度等の性能を上げようとするものです。ただし、使用するガスの最大でも1万分の1以下と小さな割合ではありますが、核融合反応が生じてしまうため、その際に微量の放射性物質であるトリチウム(三重水素)が発生します。1回の重水素実験により発生するトリチウムは、最大で400万分の1グラム(1億ベクレル)であり、放射性物質として扱わなくてもよい量です(10億ベクレル以上で放射性物質としての取り扱い)。これは最近のダイビング用などの夜光時計の表示に使われているトリチウム量の1/9程度です。

  2. 三重水素はどのような状態や容器で保管されるのでしょうか?

     発生したトリチウムは、使用したガスと一緒に酸化させて水の形にし、90%以上を除去・回収して日本アイソトープ協会に引き渡し、残りのガスは、法令基準の1/25以下であることを確認して排気塔から放出します。それによる環境への影響は、研究所の敷地境界に1年間ずっと立ち続けていた場合でも、体内に取り込まれる重水素実験に起因するトリチウムの量は、自然界にありすでに体内に取り込まれているトリチウムの量の、最大でも15分の1以下であり、重水素実験からのトリチウムによる内部被ばくの影響は無視できるほど小さいといえます。なお、人体内にはトリチウムが50ベクレル程度存在しており、その他にも放射性物質として、カリウム40、炭素14などが、それぞれ4,000ベクレル程度、2,500ベクレル程度存在しています。
     回収されたトリチウムを含む水は、専用の保管容器に貯留されて一時的に保管しますが、定期的に日本アイソトープ協会に引き渡します。

  3. 三重水素を空気中や河川や海へ放出させた場合、三重水素はどのように変化するのですか? 放射能汚染のような事態は発生するのでしょうか?

      トリチウムは宇宙線により上空で生成され、自然環境中にも、水1リットルあたり1ベクレル程度存在しているため、人体にも50ベクレル程度存在しています。トリチウムの半減期は12.3年で、弱いベータ線と呼ばれる電子を放出しますが、エネルギーが低く皮膚で止まることから外部被ばくはありません。その化学的な性質は水素とほとんど同じであり、気体として吸入しても体内に取り込まれることはほとんどありません。水や有機物の形状では体内に取り込まれますが、特定の組織に蓄積することはなく、水の形では10日、有機物の場合では40日で体外へ排出されて半減していきます。また、内部被ばくの程度も、ヨウ素131やセシウム137に比べて約500分の1と小さなものですし、トリチウムだから体内に取り込まれ易いということもありません。
     このように、研究所の計画している重水素実験により発生するトリチウムは、その絶対量が少なく、また、90%以上を除去・回収するため、環境に対する影響は無視できます。

  4. 「(トリチウムは)10億ベクレル以上で放射性物質としての取り扱い」、とあるのは、何か法令などで定められているのでしょうか? 

     ご質問に関することは、法律で定められています。放射性物質とは「放射性同位元素」のことを指し、「放射線同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」の第2条第2項において、「この法律において「放射性同位元素」とは、りん32、コバルト60等放射線を放出する同位元素及びその化合物並びにこれらの含有物(機器に装備されているこれらのものを含む。)で政令で定めるものをいう。」と定義されています。
     この法律の中にある「政令で定めるもの」とは、「放射線同位元素等による放射線障害の防止に関する法律施行令」の第1条において、「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(第20条の3第1号を除き、以下「法」という。)第2条第2項の放射性同位元素は、放射線を放出する同位元素及びその化合物並びにこれらの含有物(機器に装備されているこれらのものを含む。)で、放射線を放出する同位元素の数量及び濃度がその種類ごとに文部科学大臣が定める数量(以下「下限数量」という。)及び濃度を超えるものとする。」と定義されています。従って、法令で定められた数量、濃度を超えた放射性同位元素が、放射性物質としての取り扱いの対象となります。
     この施行令の中に書かれている「放射線を放出する同位元素の数量及び濃度がその種類ごとに文部科学大臣が定める数量」は、放射線を放出する同位元素の数量等を定める件(平成12年科学技術庁告示第5号)(最終改正 平成24年3月28日 文部科学省告示第59号)の第1条で示されています。

    トリチウムに関しては、

    放射線を放出する同位元素で密封されていないもの 工場又は事業所に存する放射線を放出する同位元素の数量及び容器1個に入っている放射線を放出する同位元素の濃度について、次に揚げる場合の区分に応じ、それぞれ次に定める数量及び濃度
      放射線を放出する同位元素の種類が1種類の場合 別表第1の第1欄に掲げる種類に応じて、同表の第2欄に掲げる数量及び同表の第3欄に掲げる濃度

    に該当します。ここに書かれている「別表第1の第1欄および第2欄」には、

    第1欄 第2欄 第3欄
    放射線を放出する同位元素の種類 数量 濃度
    核 種 化学形等 (Bq)  (Bq/g)
    3H 1×109 1×106
      
    との記載があります。3Hとは「トリチウム」のことで、1×109は10の9乗、すなわち10億のことです。つまり、トリチウムは10億ベクレルを超えなければ、法律上「放射性同位元素」として取扱う必要がないことになります。法律上で「放射性同位元素」として取扱うとは、購入、使用、所持に関して届出や許可が必要で、それに伴う施設とか管理設備などが必要となります。

  5. 「放射性物質として扱わなくてもよい量です」、とありますが、トリチウム自体は放射能を持っているのですよね。そうすると、「扱う」「扱わない」「量」にかかわらず、放射性物質であることにはかわりはないと思いますが、いかがでしょうか?

     法律上「放射性同位元素」として取扱う必要がない量とは、その物質をきちんとした管理をせずに普通の物質と同様に扱っていても、健康に害を与えることがない量ということです。確かに放射線を発生している物質ですが、健康に害はないもので、その例としては、ダイバーズ時計やチェコグラスがあります。ダイバーズ時計の文字盤には夜光塗料(微量の放射線を発生する物質)が塗られていますし、チェコグラスには放射性物質であるウランが含まれています。法律上「放射性同位元素」として取扱う必要がない量を超えない限り(但し、外国の製品には日本の規制値を超えているものもありますので注意を要します)、ダイバーズ時計やチェコグラスは、なんら許可や届出をすることなく、自由に製造、販売、購入ができます。
     また、カリウムの0.01%はカリウム40という放射性同位元素で、太古の昔から自然界に存在し、農作物に含まれていますが、これらの農作物に含まれているカリウム40は、法律上「放射性同位元素」としての量を超えていないため、日常的に流通、販売され、食されています。

  6. (「法令基準の1/25以下であることを確認して排気塔から放出」するという、)こちらの基準を定めている法令についても、法令の名前などを具体的に示して頂けませんでしょうか?

     この基準も、前出の「放射線同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」のなかで規定されています。具体的な数字は、平成12年科学技術庁告示第5号(最終改正 平成24年3月28日 文部科学省告示第59号)の第14条で示されています。関係する部分を下に示します。

    第1欄 第5欄 第6欄
    放射線を放出する同位元素の種類 排気中又は空気中の濃限度 排液中又は排水中の濃限度
    核 種 化学形等 (Bq/cm3)  (Bq/cm3)
    3H 元素状水素 7×101  
      5×10-3 6×101

    法令基準の1/25とは、排気中の濃度限度5×10-3の1/25で、2×10-4(Bq/cm3)となります。

  7. (重水素実験により発生するトリチウムの)除去・回収が100%にならないのは、どのような理由がありますか?

     除去・回収の方法は、まず、トリチウムを含んだガスを酸化して水にします。トリチウムは水素の仲間なので、HTOといった水になります。この水を除湿という形で回収します。除湿の方法としては、家庭にもある除湿機のように、水分を含んだ空気を冷やして水滴として回収する方法や、高分子膜という水分をよく透過させる膜を用いる方法などがあります。いずれの場合でも、装置内に付着して残存するなどして回収できないものがわずかに存在します。大量に処理すれば、回収できない量がわずかなため、回収率は100%に近くなりますが、処理する量が少ない場合は、相対的に回収率は下がります。研究所の計画している重水素実験では、トリチウムの濃度が小さく、処理量が少ないため、回収率の下限を90%としています。

  8. 将来、発電などで実用化されるであろうと仮定した場合に、(もちろん、計画中の実験とは条件は変わってきますが)その際に使用したり発生したりする、トリチウムなどの放射性物質は、どれくらいの量になると想定されますか?それが環境や人体に影響を及ぼす可能性についてはいかがでしょうか?

     100万kW級の核融合発電所では、数kg程度のトリチウムが運転中に使われると想定されています。ただし、トリチウムは運転をしながらリチウムから発電所内で製造されるため、外部から持ち込まれることはありません。トリチウムはガスの形態ではなく、金属などに吸着させた状態で保管するものと思われますので、ボンベが破損して一気に大量に漏れ出すことはありません。また、トリチウムを取り扱う施設は、3重、4重、5重と取り囲む多重防護方法により、環境にトリチウムが漏れることがないように管理する計画なため、環境に影響を及ぼすことはありません。なお、日本原子力研究開発機構では、このような多重防護の方法で実際にトリチウムを管理する研究を行っています。
2013年2月21日

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