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Q&A <2013年>

Q
  1. トリチウム回収について (日付と項目番号を修正させていただきました)
     2013年5月28日付け掲載の質問への回答の、項目2において、外部に放出される放射性物質量 が年間37億ベクレルであると記載されています。この点につき質問が2点あります。 
    (1)「実験年に依らず」とありますが、年間積算放出量が異なるのに、なぜ毎年定量の外部放出となるのですか? 
    (2)「回収すべき量は」ありますが、可能な限り回収するのではなく、「回収すべき量」を算出し、それだけ回収することを目指す、ということなのでしょうか。
  2. トリチウムの危険性について (項目番号を修正させていただきました)
     当研究所の前記回答の項目4において、トリチウムは「細胞核に取り込まれない限り」心配ない旨の記載があります。
    (1)「細胞核に取り込まれ」る場合とは、どのような場合なのですか? 
    (2)最近、福島原発の報道で、地下水等のトリチウム濃度が報告されています。トリチウムが危険性のないものであるなら、なぜこのように取りざたされているのでしょうか。年間37億ベクレルものトリチウム外部放出は、本当に安全上問題ないのですか?大変不安です。
    (3)放射性物質の人体への影響については諸説あり、科学的知見が不十分な領域かと存じます。当研究所は、放射性物質の人体への影響について、どのような立場に立たれた上で、回答されているのでしょうか。回答の前提となっている研究所の立ち位置を教えてください。 
    (4)「トリチウム 危険性」で検索したところ、京都大学教授の論文を読むことができました。
    http://homepage3.nifty.com/anshin-kagaku/sub040208saitou.2.htm
    当該論文には、母体が摂取したトリチウムは胎児に移行し、出生後も長く体内に留まること、及び、母体を経由して取り込まれた場合、直接摂取した場合よりも危険な形態で体内に留まり、よりDNAを損傷する、とあります。当研究所の前記回答には、人がトリチウムを直接摂取した場合についてしか説明がありませんでしたが、母体を経由して胎児にトリチウムが移行する場合の危険性についても見解をお示しください。

  ご質問について、それぞれ以下にお答えします。
  1. (1)トリチウムの放出量は、毎年定量の放出量としたものではなく、放出される量の最大量を示したものです。従って「実験年に依らず、年間37億ベクレル(0.1キュリー)(年間の最大積算放出量)以下にすること」という表現で示しています。実際の放出量は、この値よりも少ない量になります。
     トリチウム除去装置でのトリチウム回収率は、使用するトリチウム濃度にもよりますが、他の機関での運転実績では95%を十分に上回るものとなっており、重水素実験で設置を予定しているトリチウム除去装置も95%の回収率を十分確保できる設計となっています。前半の6年間の重水素実験では、年間に発生するトリチウムの量は最大で1キュリー(370億ベクレル)となる計画ですが、確実に回収できる量として90%以上という数字を設定しています。従って、回収できずに放出される量は10%以下ということになります。これは、年間最大トリチウム発生量1キュリー(370億ベクレル)に対して、0.1キュリー(37億ベクレル)になります。後半の3年間の実験については、重水素実験で発生するトリチウム量は年間最大で1.5キュリー(555億ベクレル)となりますが、前半6年間の運転経験を踏まえて、設計値のトリチウム回収率95%を十分達成できると考えています。この場合、トリチウムの年間最大放出量は0.075キュリー(27.8億ベクレル)となりますが、確約できる量として前半6年間と同じく、0.1キュリー(37億ベクレル)としています。

    (2)重水素実験で発生したトリチウムは可能な限り回収しますが、ここで「回収すべき量」とは、トリチウム放出量を「年間37億ベクレル(0.1キュリー)(年間の最大積算放出量)以下にする」ために、年間のトリチウム発生量が最大となった場合に必要な回収量のことです。この量は、「年間37億ベクレル以下にする」ために確実に回収する必要があるため、「回収すべき量」と表現しています。
  2. (1)多くの場合、トリチウムは水の形で体内に取り込まれ、体液(血液やリンパ液)や細胞質基質と呼ばれる細胞内の液体に入ります。これらは約10日で体外に代謝により排出されます。トリチウムから出るベータ線は、液体の中では平均で約0.6マイクロメーター、最大でも6マイクロメーターしか進むことができないため、大きさ6~10マイクロメーターの細胞核の外からは、細胞核膜に阻まれて、細胞核内の遺伝子に損傷を与えることはほとんどありません。ただし、細胞質基質の一部は細胞核の核膜表面にある小穴を通して細胞核内の液体(核質)と入れ替わるので、細胞質基質にトリチウム水が含まれていた場合は、細胞核内にトリチウム水が入ることがあります。このような場合を「細胞核に取り込まれた」場合といいます。細胞核内にトリチウム水が入ると、遺伝子のすぐ近くでベータ線を発生する場合もありますので、遺伝子を損傷する可能性があります。しかし、このトリチウム水も先の場合と同様に代謝により約10日で体外に排出されます。トリチウムの半減期は12.3年ですから、10日程度の体内での滞在ではベータ線を発生することなく、つまり放射線の影響を与えることなく、トリチウム水のまま体外に排出されるものがほとんどとなります。

    (2)報道によりますと、福島第一原子力発電所の取水口近くでのトリチウム濃度は、1,500ベクレル/リットルとのことです。この濃度は、自然水のレベル(約1ベクレル/リットル)と比べると高いのですが、法令によるトリチウム水の排出基準濃度である60,000ベクレル/リットルよりも1桁以上低い濃度なので、環境に影響を与えるような濃度ではないと思われます。しかし、自然レベルよりはかなり高い濃度のトリチウム水であるため、マスコミが大々的に取り上げているものと思います。
     核融合科学研究所が計画している重水素実験では、年間37億ベクレルのトリチウムが外部に放出された場合を想定して、影響を評価しています。条件としては、人の顔あたりの地上1.5mの地点で、トリチウム濃度が最も高くなる風速の一方向の風が吹き続けているとして、風下にあたる研究所の門衛所のところに1年間ずっと立ち続けて、このトリチウムを呼吸し続けたとしています。この場合、体内に取り込まれるトリチウム量は、人間が元々体内に持っているトリチウム量(60kgの日本人では50ベクレル(280億個))の15分の1以下である3ベクレル程度という結果が得られています。この量は自然の水約3リットルに含まれているトリチウム量と同じ程度なので、安全上の問題はないと考えられます。

    (3)核融合科学研究所では、直接トリチウムを用いた生物影響を調べる研究は行っていませんが、共同研究により他の大学の先生方が主体となって、それぞれの施設でトリチウムに関する研究を行っています。その中には、トリチウムが自然環境や生物に及ぼす影響を調べる研究も含まれています。研究所では共同研究の先生方の研究結果やそれ以外の先生方の研究結果について研究会等で議論を行い、トリチウムの生物影響やその危険性の評価を行っています。その結果、研究所が計画している重水素実験で発生するトリチウムが万が一全量放出されたとしても、人の健康も含め、環境に影響が出るレベルではないとの認識を持っています。この点については、下記、2.(4)の回答もご参考にしてください。

    (4)これまでのトリチウムの生物影響を調べた研究の多くは、法令基準の数十倍から数百倍、場合によってはそれ以上の濃度のトリチウムを含む水を投与したり、この濃度のトリチウム水に直接臓器や細胞を浸して、その影響を見たものがほとんどです。ご指摘の論文には直接投与したトリチウムの濃度が書かれていませんが、参考として挙げている著者論文などから推測すると18,500ベクレル/ccの濃度の水をマウスに投与しているようです。法令による環境への排出基準濃度は60ベクレル/ccですから、排出基準濃度の300倍以上の濃度のトリチウムを与えた実験結果です。
     トリチウムが水以外の形態、タンパク質や脂質といった有機物として取り込まれた場合は、代謝による半減期は水の場合よりも長く、30~40日といわれています。母体を経由して取り込まれたものは、この有機物の形態で取り込まれたものが多いので、「体内に留まり」といった表現になっているものと思われます。水よりも代謝による半減期が3~4倍長いので、それだけ損傷する確率が上がることは確かですが、2.(1)の回答に示したように、体内のトリチウムが必ずDNAに損傷を与えるわけではなく、ほとんどの場合はそのまま体外に排出されます。
     また、論文中には「マウスが胎児期に母体を介して取り込んだトリチウムは4週間後(ヒトで言えば多分15歳くらい)には90%以上が体外に排出されてしまう」と書かれています。この中の「ヒトで言えば多分15歳くらい」は、誤解をまねく表現で、生体としての成熟度が、マウスの場合の生後4週が人の15歳に相当するとしただけで、トリチウムが15歳まで体内に留まっているわけではありません。上で説明しましたように、有機物として人の体内に取り込まれた場合でも、代謝により30~40日で半減していきます。
     繰り返しとなりますが、これらの研究結果は、法令による環境への排出基準濃度の300倍以上の高濃度のトリチウムを投与して得られたものです。なお、放射線の感受性が高いといわれている卵母細胞を用いた実験では、法令による環境への排出基準濃度程度のトリチウム投与で影響が見られたというデータはないようです。
     これまで述べてきたように、トリチウムは放射性物質としては弱いため、体内に入ってもその影響は他の放射性物質に比べて小さく、また、特定の臓器に蓄積することはなく、代謝により体外に排出されて、長くても数10日で半減していきます。これに比べて、人間の体内にはトリチウムの他にも、カリウム40、炭素14といったトリチウムよりもエネルギーの高い放射線を出す放射性物質がたくさん存在しており、これらはいくつもの細胞にまたがって影響を与えてしまうため、細胞核の中に入らなくても遺伝子を傷つける確率は高いものとなります。これらにより日常的に内部被ばくを受けていますが、自己修復機能により健康被害を受けることはありません。DNAの損傷という観点では、自然界から体内に取り込まれている放射性物質よりも、活性酸素などにより受けるものがほとんどです。また、活性酸素の他、多くの化学物質からも損傷を受けています。
2013年8月23日

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